痴漢や盗撮、援助交際、万引きや暴行傷害などの犯罪行為をしても、その場で捕まるとは限りません。いつ発覚するかわからないので、「逮捕されるかもしれない」とおびえながら生活されている方もおられるでしょう。
そんなとき「自首」すれば刑罰を軽くしてもらえる可能性があります。
今回は自首の成立要件やメリット・デメリットについて、名古屋の弁護士が解説していきます。
このページの目次
1.自首とは
自首とは、捜査機関に犯罪が発覚する前に犯人が自主的に捜査機関へ犯罪事実を申告することです。
たとえばコンビニの商品を万引きした場合、コンビニの店員が警察に被害届を提出する前に自分から警察に行って「万引きしました」と申告すれば自首が成立します。
自首が成立すると、適用される刑罰を減軽してもらえる可能性が高くなります。たとえば懲役刑が適用されるはずの場合でも罰金刑にしてもらえたり、実刑になるはずの場合に執行猶予をつけてもらえたりします。
刑法は「自首が成立したときには刑罰を減軽することができる」と規定しています。この内容からすると「必ず減軽されるとは限らず、裁判官の裁量によって減軽できる」ことになります。ただし実際には自首が成立すると本来の刑よりかなり軽くしてもらえるケースがほとんどです。自首したのにそのことがまったく評価されないケースは通常ありません。
犯罪行為をしてしまい毎日が不安な方は、自首を検討してみる価値があるといえるでしょう。
2.自首が成立する要件
自首が成立するには「捜査機関に犯罪が発覚する前」に自ら犯罪事実を申告しなければなりません。
すでに犯罪が発覚して「犯人がどこにいるかわからない」「まだ捕まっていない」という段階で出頭しても自首にはなりません。つまり被害申告すら行われておらず警察がまったく気づいていない状態で出頭しないと自首になりません。自首によって刑罰を軽くしてもらいたいなら、被害届などを提出される前に、早めに行動する必要があります。
3.自首による効果
自首するとどのような効果を期待できるのでしょうか?
3-1.適用刑の任意的減軽
自首が成立すると、刑事裁判になったときに刑罰を軽くしてもらえる可能性があります。必ずではなく裁判官の裁量によって減軽されるかどうか決まります。
3-2.法律上の減刑の方法
刑法では、刑罰を減軽する方法が定められています(刑法68条)。
- 死刑の場合、無期懲役もしくは禁固または10年以上の懲役もしくは禁錮になる
- 無期懲役または禁錮の場合、7年以上の有期懲役または禁錮になる
- 有期懲役または禁錮の場合、長期と短期が2分の1になる
- 罰金刑の場合、最高額と最低額が2分の1になる
- 拘留の場合、長期が2分の1になる
- 科料の場合、最高額が2分の1になる
3年を超える刑罰しか定められていない重罪でも、自首減刑を受けられて言い渡し刑が3年以下になったら執行猶予をつけて可能性も出てきます。
4.自首のメリット
自首にはどのようなメリットがあるのか、みていきましょう。
4-1.刑罰を軽くしてもらえる
まずは刑罰を軽くしてもらえることが第一です。法律上は「任意的減軽」となっており、減軽されるかどうかは裁判官の裁量次第です。ただ現実にはほとんどのケースで自首すると刑罰が軽くなります。減軽を受けられるケースが多いですし、たとえ上記のようにはっきりと「適用刑の減軽」を受けられないとしても、もともとの刑罰の範囲内では量刑を軽くしてもらえます。
4-2.不起訴処分になりやすい
犯罪の内容が比較的軽く、自首した本人がしっかり反省していたら「不起訴処分」にしてもらえる可能性も高くなります。
自ら出頭したことが良い情状となりますし、そのような犯人なら不起訴にしても社会内で自主的に更生できると考えられるからです。
4-3.突然の逮捕を避けられる
自首のメリットには「逮捕の回避」もあります。自首しないと、いつ何時警察が自宅や勤務先などにやってきて逮捕されるかわかりません。逮捕される場合、準備も家族とのお別れもできずに突然警察に連れて行かれるので、周囲に与える影響が大きくなってしまいます。
自首する場合にはきちんと準備してから出頭できるので、「ある日突然の逮捕」という事態を避けられます。仕事の整理や家族とのお別れなども済ませてから出頭すれば、たとえ身柄拘束を受けるとしても不利益が小さくなります。
5.自首のデメリット
自首にもデメリットはあります。
5-1.時効によって逃れられる可能性がなくなる
1つは、犯罪が発覚しないまま時効が成立して刑罰を逃れられる可能性がなくなることです。
犯罪行為をしてもその後一定期間起訴されなければ、起訴できなくなります。逮捕もされませんし刑罰を適用される可能性は完全になくなります。
自首したら何らかの処分は受けるので、時効によって刑罰を逃れることは不可能となります。
5-2.その場で逮捕される可能性がある
自首した場合、必ずではありませんがその場で逮捕されて身柄拘束を受ける可能性があります。自首するときにはしっかり準備していく必要があるでしょう。
6.自首の方法
自首は、自分で警察署に行って犯罪事実を申告すれば成立します。持参しなければならないものなどもありません。
ただし、現実には書面を作成していくことをお勧めします。何もないまま自首すると、後にいつの時点で自首したかが曖昧になって「犯罪事実が発覚する前」という要件を満たすか問題になってしまうケースがあるためです。
自首による効果を確実にしてデメリットを避けるには、弁護士が同行すると有効です。弁護士がサポートする場合には「自首報告書」を作成しますし、捜査機関へ逃亡や証拠隠滅のおそれがないことなどを主張して逮捕勾留による身柄拘束のリスクを低減できます。
また、自首後の被害者との示談交渉や不起訴処分へ向けた活動なども積極的に進められます。
当事務所でも自主に同行するサービスを行っております。犯罪行為をしてしまい不安な気持ちでお過ごしの場合、事件発覚前にお早めにご相談下さい。