痴漢や盗撮などの違法行為をしてしまっても「どうしても前科をつけたくない」と考えるものです。実際、前科がつくと一生消えませんし人生においてさまざまな不利益を受ける可能性が高くなります。
前科をつけないためには逮捕直後から適切な対応をとる必要があり、刑事弁護人の存在が非常に重要となってきます。
今回は前科がつくことによる不利益と前科をつけない方法について、名古屋の弁護士が解説します。
このページの目次
1.前科がつくことによるさまざまな不利益
1-1.いったん前科がつくと一生消えない
痴漢や万引き、ちょっとした暴行事件であっても刑事裁判となって有罪判決を受けると「前科」がつきます。前科はその人の戸籍が抹消されるまで検察庁のデータベースで保管され続けるので、基本的に「一生消えません」。
数年経ったらなかったことにしてもらえる制度などは存在しません。
それだけではなく、以下のような具体的なリスクが発生します。
1-2.解雇、失職のおそれ
会社などにお勤めの方の場合、前科がついたことを理由に解雇される可能性があります。前科がついたら即解雇、というわけではありませんが、犯罪行為を起こしたことによって企業の信用を大きく低下させた場合、会社のお金を横領した場合などには間違いなく解雇されるでしょう。
また弁護士や医師、教師などの資格をもって働いている人の場合、前科がついたことによって資格を失い失職するおそれも高まります。
1-3.仕事に就けないおそれ
これからの就職活動に支障が生じるケースも多数です。基本的には採用の際に前科を申告する義務はありませんが、聞かれた場合には正直に応えないと入社後のトラブルにつながります。
また企業側が採否を判定するときにネットで実名検索をして犯罪歴を突き止め、不採用の決定をするケースもあります。
1-4.差別を受けるおそれ
前科があることを周囲に知られると、さまざまな差別を受けるでしょう。近所の人からも噂されたり気味悪がられたりするでしょうし、親戚からもつまはじきにされる可能性が高くなります。
1-5.離婚のリスク
配偶者のいる方は、前科がついたことによって離婚されるリスクがあります。前科が必ずしも離婚理由になるとは限りませんが、配偶者が愛想を尽かして夫婦関係が著しく悪化する可能性は高いでしょう。婚姻生活の継続が困難となれば、離婚せざるを得なくなります。
1-6.次に捕まったときに処罰が重くなる
いったん前科がつくと、次に逮捕されたときの処分が重くなります。初犯なら不起訴にしてもらえる犯罪でも起訴されて罰金や懲役刑が適用されるでしょうし、本来執行猶予をつけてもらえる罪でも実刑となる可能性が高まります。
1-7.ネット上に情報がいつまでも残るリスク
最近では、世間の目を引く犯罪行為が行われたらすぐにネットニュースなどで流れてしまいます。ネットニュースはいつまでも消えないケースがあるので要注意です。実名報道が行われると、3年、5年が経過してもその記事がネット上に残り、人の目に触れ続ける可能性があります。
2.前科をつけない方法
いったん前科がつくと消せずに不利益が大きくなるので「前科をつけないための対策」が重要です。どのようにすれば前科を避けられるのでしょうか?
2-1.逮捕・立件されない
1つは「そもそも逮捕・立件されない」方法です。たとえば万引きなどをしてもすぐに示談をして和解金を払えば被害者は被害届を提出しません。そもそも事件にならないので逮捕される可能性もなく、前科がつく可能性も0%です。
2-2.不起訴処分
いったん立件されてしまった場合には、「不起訴処分」にしてもらうのが有効な方法です。不起訴処分とは検察官が「被疑者を起訴しない」と決定することです。起訴されないので刑事裁判にならず、前科がつく可能性はありません。
2-3.無罪
起訴されて刑事裁判になってしまった場合、前科をつけないためには「無罪判決」を獲得するしかありません。ただし無罪の可能性があるのは「犯罪を犯していないケース」のみです。実際に犯罪行為をしていたら必ず有罪になります。また日本の刑事裁判では有罪率が99.9%以上となっているので、いったん起訴されると無罪判決を獲得するのは非常に困難です。
ただし不可能ではないので、冤罪で起訴されたら何としても無罪判決を獲得すべきです。
3.前科をつけないためには不起訴処分が有効
一般的なケースで「前科をつけないため」のもっとも有効な対処方法は、不起訴処分です。
実際に犯罪を犯していても、被疑者がきちんと反省して被疑者と示談が成立しているなどの良い情状があれば、不起訴にしてもらえる可能性は充分にあります。
不起訴率は犯罪の種類によっても異なりますが、たとえば平成29年度における全体的な不起訴率は67.1%にも及びます。
無罪判決を獲得するのは極めて困難なので、逮捕されたらまずは不起訴処分を目指しましょう。
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/65/nfm/n65_2_2_2_3_0.html
4.不起訴処分を獲得する方法
4-1.被害者と示談を進める
被害者のいる犯罪では、被害者との示談が成立すると不起訴になる可能性が一気に高まります。痴漢や盗撮、万引きや暴行などの事件を起こしたら、まずは被害者に謝罪をして賠償問題について話し合いましょう。ご本人が直接示談を進めるのは困難なので、刑事弁護人を選任して代理人による交渉を進めるべきです。
4-2.反省の態度を示す
検察官に対し、しっかりと反省の態度を示しましょう。きちんと反省して自分の罪を見つめ直している人は再犯のおそれがないと判断されて、不起訴にしてもらえる可能性が高くなります。
4-3.監督者の存在をアピールする
家族や勤務先などによる監督が期待されることをアピールするのも有効です。このことによって「再犯可能性がない」と判断してもらえたら不起訴になる可能性が高まります。
逮捕前や実際に逮捕されたとき、お一人でできることは極めて限られており、早めに不起訴に向けた対応を進めて前科を避けるには、弁護士によるサポートが必須です。
当事務所では各種犯罪の刑事弁護に積極的に取り組んでいますので、名古屋で「前科をつけたくない」とお悩みの方はお早めにご相談下さい。