犯罪の被疑者となり逮捕されると、長期にわたって身柄拘束される可能性があります。身柄拘束期間が長くなるとその分不利益が大きくなるので、早急に身柄を解放してもらうための対応を進めましょう。
今回は逮捕されるとどのくらいの期間身柄拘束される可能性があるのか、また家に帰るにはどのような手段をとるべきか弁護士が解説します。
このページの目次
1.逮捕後の身柄拘束期間
逮捕されると、以下のような流れで身柄拘束が続く可能性があります。
1-1.逮捕後72時間以内に勾留されるか釈放される
逮捕後72時間以内に「勾留」されるかどうかが決まります。勾留されれば引き続き警察の留置場で身柄拘束されますが、勾留されなければ逮捕後3日以内に釈放されます。
ただし釈放されても刑事事件が終わるわけではなく被疑者在宅のまま捜査が続けられます。
1-2.勾留されると10日~20日は留置場から出られない
勾留された場合には、原則として10日間警察の留置場で身柄拘束されて取り調べを受けたり実況見分に立ち会ったりさせられます。10日で捜査が終わらない場合、さらに10日間勾留期間を延長されて最長20日間勾留され続ける可能性があります。
1-3.不起訴や略式請求になったら釈放される
勾留期間が満期になると、検察官が処分決定します。「不起訴処分」や「略式起訴」となった場合には、すぐに身柄を解放してもらえます。ただし略式起訴となった場合には罰金の前科がつきます。
1-4.公判請求された場合、保釈されれば釈放される
検察官の処分決定により公判請求されて正式な裁判になると、被疑者の身柄は拘束されたままです。ただ起訴後には「保釈」制度が適用されるので、保釈申請をして認められれば外に出て家に戻れます。
2.身柄拘束による不利益
警察の留置場や拘置所で身柄拘束を受け続けると、以下のような不利益が及びます。
2-1.不利な自白をしてしまうリスク
一般の方が留置場や拘置所で生活させられるのは大変なストレスです。外の様子が分からず不安な気持ちも大きくなります。そんなとき、捜査官から「このままだと10年は刑務所に行くことになるぞ」「早く外に出たくないのか」などと迫られて虚偽の自白をしてしまうのも無理からぬことでしょう。いったん不利益な供述をしてしまったら、覆すのは困難になるケースも多いので注意が必要です。身柄拘束が長びくと、虚偽の自白をしてしまうおそれが高まります。
2-2.解雇、失業のリスク
会社員の方が身柄拘束されると、その期間は出社できなくなります。無断欠勤期間が10日、2週間となってくると、会社側も懲戒解雇を検討し始めるでしょう。
家族がいる方の場合には家族が会社と連絡をとるケースが多いのですが、身柄拘束期間が長引くと説明や言い訳も難しくなります。最終的には逮捕されたことを言わざるを得ず、解雇を始めとした不利益な処分につながるリスクが高まります。
2-3.退学、留年のリスク
学生の方が逮捕された場合、長期間無断欠席することで退学のリスクが高まります。出席単位が足りなくなったりテストを受けられなかったりして留年してしまう可能性もあります。
2-4.強いストレス、家族に心配と迷惑をかける
警察や拘置所での生活は、外での生活とは全く異なり隔絶されたものです。起床時間、食事の時間、寝る時間などすべて決められていますしお風呂も毎日は入れないのが通常です。
パソコンやスマホは使えませんし電話もできません。家族と面会できるのは捜査官立ち会いの下で10~20分程度です。このような生活で、被疑者は大きなストレスを抱えます。
家族も身柄拘束が長びいたら本人を心配するでしょうし、会社や学校に説明しなければならなかったり差し入れしなければならなかったりして負担がかかります。
3.釈放されるための対処方法
逮捕後に釈放されるには、以下のような対処を行う必要があります。
3-1.勾留しないように働きかける
逮捕後すぐに検察官へ勾留請求しないように働きかけます。検察官が勾留請求しなければ逮捕後72時間以内には身柄が釈放されるからです。そのためには家族に身元引受書を書いてもらって弁護人から検察官に提出し、逃亡のおそれも証拠隠滅のおそれもないと説得的に説明します。
3-2.勾留を争う
勾留されたら、その効果を争ったり勾留の取り消しを求めたりします。「準抗告」という異議申立の手続きを利用して勾留決定の効果を争い、認められたら被疑者の身柄が釈放されます。また「勾留執行停止」という申立を行い、一時的に勾留を解いてもらうことも可能です。勾留原因がなくなった場合には「勾留取消請求」を行って勾留を取り消させて釈放を目指すこともできます。
3-3.不起訴処分を目指す
勾留が解かれない場合には不起訴処分の獲得を目指します。不起訴になれば身柄は解放され前科もつかないので被疑者にとってのメリットが大きくなります。
被害者のいる事件なら早期に示談することが重要です。身柄拘束されている被疑者が示談の話し合いをするのは不可能なので、刑事弁護人が代わって対応を進めます。また被疑者の反省状況を示し家族による監督を期待できること、初犯であること、再犯防止策をしっかり検討していることなどを説得的に伝えたら不起訴処分になる可能性が高くなります。
効果的に不起訴処分に向けた活動を進めるには刑事弁護人が必須です。
3-4.保釈申請をする
起訴された事案では早急に保釈申請をします。保釈が認められたらすぐに留置場や拘置所から出してもらえて家に戻れます。保釈申請も刑事弁護人が行います。
3-5.執行猶予を目指す
起訴された場合、実刑判決を避けることも重要です。実刑判決を受けると刑務所に収監されて、数か月~数年刑務所内での生活を余儀なくされるからです。
無罪主張する事案ではしっかりと無罪の証拠を集めるなどして無罪判決を出してもらう必要があります。
刑事裁判で有利な判決を得るには刑事弁護人による弁護活動が極めて重要です。
当事務所では被疑者・被告人の方の受ける不利益を少しでも小さくするため、身柄の釈放に向けた活動に積極的に取り組んでいます。名古屋でご家族が逮捕されたらお早めにご相談下さい。