刑事裁判の被告人の立場となり犯罪事実自体は認めている場合、「執行猶予」がつくかどうかでその後の人生が大きく変わります。
執行猶予がついたら有罪判決であっても刑務所に行かずに済みますが、執行猶予がつかなかったら刑務所に行かねばならないからです。
以下では執行猶予判決を獲得するメリットとその方法をご紹介していきます。
このページの目次
1.執行猶予判決とは
執行猶予とは、有罪となって懲役刑や禁固刑が言い渡されてもその刑の執行をすぐに手今日せず猶予することです。
懲役刑や禁固刑となった場合、本来なら刑務所に行かなければなりません。しかし執行猶予がついたらすぐには刑務所に行かずに済みます。執行猶予には一定の期間が設けられます。その期間中、さらなる問題行動を起こさなければ、猶予された刑については適用を免れます。
たとえば「懲役2年、執行猶予4年」という判決が出た場合、判決言い渡し後4年間、問題を起こさず真面目に生活していれば、2年の懲役を受けずに済むということです。執行猶予がつかずに実刑になれば、判決後すぐに2年間刑務所に行かねばならないので失うものが大きくなります。被告人にとって執行猶予がつくかどうかは「人生を変えるポイントとなる」と言っても過言ではないでしょう。
2.執行猶予判決を狙うべきケース
刑事事件になったとしても、すべてのケースで執行猶予を狙うわけではありません。
執行猶予を狙うべきケースは以下のような場合です。
2-1.刑事裁判(通常裁判)になった
刑事事件になっても、不起訴処分になれば刑事裁判にならないので執行猶予を考える必要はありません。また「略式起訴」された場合にも罰金刑または科料となり執行猶予は通常つかないので検討の余地はありません。
不起訴にも略式起訴にもならず「通常起訴」されて通常の刑事裁判となったケースでのみ、執行猶予判決が重要となってきます。
2-2.罪を認めている
刑事裁判になった場合でも「無罪主張」している場合には通常執行猶予判決を狙いません。執行猶予判決は「有罪判決」だからです。
「犯罪行為をしていない」なら「無罪判決」を狙うべきです。執行猶予を目指すのは「罪を認めている場合」に限られます。(ただし無罪主張でも有罪になる可能性を視野に入れて執行猶予を意識すべきケースはあります)
3.執行猶予期間中の生活
執行猶予がついた場合、猶予期間中はどのように生活をすればよいのでしょうか?
3-1.犯罪行為をしない
執行猶予期間中に別の犯罪行為をすると、執行猶予を取り消される可能性が高くなります。取り消されてしまったら、新しい罪の刑罰と執行猶予を受けた刑罰の両方が適用されて、非常に長い期間刑務所に行かねばならない事態が発生します。
執行猶予期間中は、犯罪に巻き込まれないよう充分注意が必要です。危ない話には関わらず、悪い知人友人とは縁を切り、痴漢に間違えられるような言動をせず、運転される方は人身事故を起こさないよう注意深く生活しましょう。
3-2.保護司の指導にきちんと従う
執行猶予期間中は「保護観察」といって、保護観察官や保護司による指導監督をつけられるケースがあります。その場合、担当の観察官や保護司の指導にきちんと従って生活すべきです。定期的に保護観察官との面談が行われるので、きちんと対応しましょう。
3-3.職業や海外渡航の制限
執行猶予期間中であっても、基本的には従来通り自由に生活できます。就職、引っ越し、旅行なども可能ですしローンなどの利用もできます。
ただし弁護士や医師、教師などの一部の職業の場合、資格を取り消される可能性があります。
また海外に行く場合にはビザ取得のために「犯罪歴証明」が必要なケースがあり、渡航許可が下りない可能性もあります。
4.執行猶予判決を獲得するメリット
執行猶予判決を獲得すると、以下のようなメリットがあります。
4-1.刑務所に行かなくて済む
まずは刑務所に行かなくて良いのが一番のメリットと言えるでしょう。刑務所に行くと、社会から完全に隔離されますし自分でも「犯罪者となってしまった」という実感がひしひしとわいてきます。不自由な生活を強いられて大きなストレスも受けるでしょう。
執行猶予判決を獲得できればそのような不利益は受けません。
4-2.社会からの偏見も小さくなる
社会では「犯罪者」に対する目線が非常に厳しくなっています。特に「刑務所に行ってきた」と言えば何事かと思われますし、偏見によって就職なども難しくなるでしょう。子どもがいる方の場合、将来の子どもの結婚などにも影響する可能性が出てきます。
たとえ有罪判決であっても執行猶予判決を受けることができたら、社会からの偏見が小さくなります。
5.執行猶予判決を獲得する方法
刑事裁判で執行猶予判決を獲得するには、以下のように対処しましょう。
5-1.示談を成立させる
強制わいせつや傷害、詐欺や窃盗などの「被害者のいる犯罪」では、被害者との示談を成立させることが重要です。示談が成立して被害弁償が済んでいれば、裁判所もよい情状ととらえてくれて無罪判決を下す可能性が高くなるからです。
起訴までに示談できなかった場合、起訴後も引き続いて示談交渉を進めて早急に示談をまとめるべきです。
5-2.反省の態度を示す
刑事裁判では、しっかり反省している態度を明らかにしましょう。反省文を提出するのも良いですし、被告人質問の際に自分の思いを自分の言葉で裁判官に伝えることが大切です。
5-3.情状立証を行う
ご家族など更生に協力してくださる方がいれば、積極的に出廷して頂き情状証人としてお話し頂くことも重要です。配偶者や親、親族がいない方の場合には勤務先の雇用主の方や普段お世話になっている知人等の監督者に出廷をお願いするケースもあります。
執行猶予を獲得するためにどういった活動を行うかはケースによっても異なるため、刑事弁護人が最適な方法を検討して対応を進める必要があります。被告人質問や証人尋問の準備も刑事弁護人が主となって進めます。名古屋で刑事事件となり執行猶予判決を獲得されたい方がおられましたら、お早めにご連絡ください。