警察から「おたくのお子さんを逮捕しました」と連絡が来たら、どのような方でも気が動転してしまうでしょう。
まずは気持ちを落ち着けてどういった罪で逮捕されたのか、どこの警察署で留置されているのかなどを聞き取り、すぐに弁護士に相談してください。
今回は子どもが逮捕されたときの対処方法を解説します。
このページの目次
1.子どもが逮捕されると、身柄拘束が長びく可能性がある
子どもが逮捕された場合、未成年か成人かで手続きが大きく異なります。
成人であれば逮捕後3日以内に勾留されるか釈放されるか決まります。勾留された場合、その後最長20日間警察の留置場で身柄拘束されて取り調べなどを受け、検察官により起訴されるか不起訴になるかが決定されます。
未成年の場合にも逮捕後3日以内に引き続き身柄拘束されるかどうか決まります。ただし勾留ではなく「勾留に代わる観護措置」という処分により少年鑑別所で身柄拘束されるケースも多数あります。勾留にしても勾留に代わる観護措置にしても、最長20日間身柄拘束されることになります。
また少年の場合「不起訴処分」に相当する手続きがなく、全件が家庭裁判所へ送致されます。身柄拘束されていた場合、通常はあらためて「観護措置決定」が出て引き続き少年鑑別所で身柄を拘束されます。
家庭裁判所に送致後の観護措置は3~4週間続くので、少年事件で逮捕されると、最大2か月弱外に一切出られない状態が続いてしまいます。
2.身柄拘束が長びくことによるリスク
子どもが逮捕されて身柄拘束が長びくと、以下のようなリスクが発生します。
2-1.退学処分を受けるおそれ
少年鑑別所に入れられている間は一切登校できません。無断欠席が続くと学校側も事情を尋ねてくるでしょう。私立の場合には退学させられる可能性も高くなります。
2-2.留年のおそれ
出席日数が足りなくなったりテストを受けられなかったりして留年するリスクが高くなります。
2-3.解雇のおそれ
仕事をされている方の場合、長期の無断欠勤が続くことによって解雇される可能性があります。
3.少年審判のリスク
未成年者が逮捕された場合、成人の刑事手続とは違い「刑事裁判」にはならないのが原則です。
基本的にすべての事件が家庭裁判所に送られ「少年審判」を開くかどうかが検討されます。少年審判では審判官が「保護観察」「少年院送致」「不処分」「検察官送致」「児童相談所長または都道府県知事への送致」の中から処分を決定します。
不処分や保護観察処分になったら子どもは家に戻ることができますが、少年院送致になったら数か月~2年程度の間少年院に行かねばなりません。そうなったら、もちろん学校は退学となるでしょうし、仕事をしている方も続けられなくなるでしょう。
子どもの人生が大きく狂ってしまう可能性が高くなるので、少年審判における「少年院送致」の決定は避ける必要があります。
4.検察官送致(逆送)について
少年審判の決定に「検察官送致」があります。これは近年の少年犯罪の厳罰化にともなってできた制度であり、非行傾向が強い14歳以上の少年が重大犯罪を起こした場合などに「少年を検察官の元へ送る」措置です。
検察官の元に送られた少年は、成人と同様の刑事手続で裁かれます。つまり、公判請求されて通常の刑事裁判の「被告人」となり、検察官から責任追及をされて裁判官により「刑罰」を言い渡される可能性があります。
少年審判では少年は「刑罰」を受けることはありません。少年院送致の目的は刑罰を与えることではなく少年を保護し、きちんと社会に適合できるように矯正することです。
しかし成人の刑事事件で与えられる「懲役刑」や「禁固刑」は「刑罰」です。未成年であっても検察官送致されて通常の刑事事件になった場合には、大人と同じような刑罰を与えられる可能性があります。
5.少年犯罪と報道
刑事事件を起こした場合、新聞やテレビなどで報道される可能性があります。未成年による犯罪でも、世間の目を引くような内容であれば報道されるケースがあります。
ただ一般の少年犯罪の場合、少年のプライバシーが重視されるので報道機関も自主規制しており、報道されるとしても匿名となるケースがほとんどです。
ただ、近隣の人などがニュースを見たら誰のことか分かる可能性もありますし、ネットを始めとしたいろいろなところから情報が漏れるリスクもあります。
6.子どもが逮捕されたときに弁護士ができること
6-1.接見してアドバイスをしたり励ましたりする
いきなり逮捕や勾留などによって身柄拘束されると、大人でも気が動転します。まして未成年の子どもの場合、混乱してどうして良いかわからなくなり、捜査官に誘導されるままに不利な供述をしてしまう可能性もあります。弁護士が接見して必要なアドバイスを行い、励まして本人を安心させることで、不利益を小さくすることが可能です。
6-2.身柄拘束期間が短くなるように働きかけを行う
少年事件では、なるべく身柄拘束期間を短くする必要があります。弁護士が検察官や家庭裁判所に働きかけて勾留や観護措置を回避し、なるべく身柄拘束が行われないように対応を進めます。
6-3.少年審判で保護観察処分となるように活動する
少年審判になった場合、少年院送致を防ぐことが重要です。弁護士は調査官と面談して少年院送致の必要がないことを説得的に伝えたり、少年にとって有利な事情を集め「付添人意見書」をまとめたりして、少年を保護観察処分とするよう要求します。このことで不利益な処分を避けられる可能性が高まります。
実際に罪を犯していない場合、無罪の証拠を集めて審判不開始や不処分を求めます。
6-4.学校や勤務先、マスコミ対応
子どもが逮捕されたとき、学校や勤務先にも適切な対応を進めなければなりません。弁護士が間に入って説明を行うことも可能ですし、ご家族に対処方法について助言することもできます。
重大事件などでマスコミ対応が必要な場合にも弁護士が対応します。
子どもが逮捕されたとき、放っておくと一生に関わるケースも少なくありません。名古屋でお子様逮捕の連絡を受けられた場合には、早急にご相談下さい。