刑事事件を起こすとテレビや新聞、ネットなどで実名報道されてしまう可能性があります。いったん顔写真つきで実名報道されると、その後の社会復帰に重大な支障が発生するでしょうからできれば避けたいものです。
今回は刑事事件で実名報道されやすいケースや実名報道をなるべく避ける方法について、名古屋の弁護士が解説します。
このページの目次
1.報道されやすいケース
痴漢や横領、暴行事件、交通事故など、日々いろいろな刑事事件が起こっていますが、すべての刑事事件が報道されるわけではありません。報道されやすいのは以下のような事件です。
1-1.重大事件
殺人事件や強盗事件、組織的な詐欺や被害額の大きな財産犯、有名企業や組織内における業務上横領などの重大事件は報道の対象になりやすい傾向があります。
1-2.被疑者・被告人が有名人
被疑者や被告人が芸能人や有名スポーツ選手などの有名人の場合、一般人よりも報道される可能性が大きく高まります。
1-3.被疑者の職業に公的側面がある
被疑者が公務員、政治家、教師、警察官などの公的な職業に就いていると、民間の会社員や自営業者、無職の人より報道される可能性が高くなります。
1-4.被疑者の社会的地位が高い
被疑者が大学教授や医師、大企業の役員などの社会的地位の高い立場にあると、報道されやすい傾向があります。
1-5.話題性の高い事件
世間で大きく話題になった交通事故や一風変わった事件、多額の脱税事件など話題性の高い事件も報道対象になりやすい傾向があります。
公的な職業に就いている方や社会的地位の高い方が報道されると、職や信用を失って致命的なダメージを受けるリスクがあります。刑事事件では、身柄拘束や前科を避けるのと同じように報道を避けるための対応も重要です。
1-6.報道されにくい事件
以下のような事件は報道されにくい傾向があります。
- 被疑者が未成年
- 一般人が被疑者の軽微な事件
- 特殊性のないよくある事案で、話題性のない事件
2.報道されやすいタイミング
刑事事件がニュースや新聞などで報道されやすいのは、以下の2回のタイミングです。
2-1.逮捕後2~3日の間
逮捕されたその日に報道されることもありますし、逮捕後1、2日経過して警察署から検察庁に送られるところを、警察署に押し掛けてきた報道機関に捉えられるケースも多々あります。
2-2.起訴直後
起訴されると事件が世間の注目を浴びるため、報道される可能性が高くなります。
3.いろいろな報道の種類 匿名か実名か
刑事事件が報道されるとき、報道方法にはいろいろなパターンがあります。
3-1.匿名報道と実名報道
刑事事件の報道には「匿名報道」と「実名報道」があります。匿名報道の場合には、被疑者の実名や写真は公開されず「会社員の男」などと表記されます。この方法であれば、報道されてもさほどの痛手はありません。
一方実名報道の場合、被疑者の実名と顔写真つきでテレビや新聞、ネットなどにニュースが流れます。実名報道されると世間の多くの人に氏名と顔を知られるので、影響は非常に大きくなります。
3-2.利用される画像の種類
実名報道されるときに利用される本人の画像もさまざまです。
よくあるのは、警察署から検察庁へと護送されるときの様子を撮影され報道に使われるパターンです。これについては、護送されるときに顔を上げなければ顔の写り込みを避けることが可能です。被疑者や被告人の卒業アルバムや日常で撮影された写真を使われるケースもあります。
3-3.メディアによる対応の違い
テレビや新聞、ネットニュースにはいろいろなメディアがあり、あるメディアでは報道されてもあるメディアでは報道されないといったことも起こります。
たとえば名古屋で起こった事件については、全国ニュースでは流れなくても名古屋の地元メディア(テレビや新聞、ネットニュースなど)には流れる可能性があります。
4.報道されないための対処方法
刑事事件の報道を「100%避ける方法」はありません。
ただし以下のような対処方法をすれば報道のリスクを大きく低減できます。
4-1.逮捕前に示談する
痴漢や暴行などの被害者のいる事件の場合、逮捕前に被害者と示談できれば逮捕されずに事件を解決できる可能性が高くなります。刑事事件にならなければ、報道される可能性はありません。
刑事事件を起こして報道を避けたければ、一刻も早く弁護士を代理人に立てるなどして被害者へ謝罪し、示談交渉を開始すべきです。
4-2.自首する
逮捕前に自首すると、逮捕されず在宅捜査となる可能性が高くなります。在宅捜査であれば通常は実名報道されないので、不利益を避けやすくなります。
4-3.捜査機関、マスコミへ申し入れをする
逮捕直後に弁護人が捜査機関側やメディアへ「報道によって本人が受ける不利益の大きさ」や「無罪になる可能性が高いこと」「報道の必要性が低いこと」などを申し入れて報道を抑制するように要請すると、報道が自粛されるケースがあります。また各メディアに対し、弁護士が「今後は弁護士が窓口になるので、取材等はすべて法律事務所を通じるように」と要請することによって被疑者宅へマスコミが押し掛けてくるなどの混乱を避けやすくなります。
4-4.不起訴処分を獲得する
逮捕時の報道を避けられた場合、次に報道される可能性があるのは「起訴直後の段階」です。これについては「不起訴処分」を獲得できれば報道の危険性はなくなります。
逮捕されたらすぐに被害者との示談交渉を始めとした弁護活動を開始し、不起訴処分獲得に向けた対応を開始すべきです。
4-5.記者会見への対応
世間的に大きな耳目を集める刑事事件の場合、起訴されたらマスコミが公判の開廷日に裁判所へ押し掛けてきます。その際には弁護人が司法記者クラブで会見に対応し、適切な説明を行って無用な混乱や批判を避けるための対処を行います。
刑事事件になったとき、報道されるかどうかでその後の人生が大きく変わるケースも少なくありません。当事務所では報道機関への対応も行っていますので、名古屋で逮捕されて報道による不利益を最小限度にするためお早めにご相談下さい。