勾留阻止

お子様が逮捕された場合の勾留を阻止しました

2024-09-22

事案の概要

Aさんは、こどものBさんが、C罪で現行犯逮捕されてしまい、勾留を阻止又は早期の釈放ができないかということで、ヒラソルにご相談いただきました。

 

逮捕段階の弁護は、私選弁護を経験したことがある弁護士でなければ対応したことがなく、ご家族がBさんに協力的であるため、当番弁護士などの出動を待つまでもなく、ヒラソルにご依頼いただきました。

 

ヒラソルの弁護人は、被害者であるBさんとの接触の懸念を検察官や勾留担当裁判官が抱かないようにすることが重要と考え、まず直ちにBさんに面会を申し込み面会のうえ、示談書及び減軽嘆願書を取得しました。

 

時間との戦い

通常は、警察署は逮捕してから検察庁に送検するのは原則48時間以内となっています。

 

しかし、カレンダーの都合で連休に入ることから、土曜日に検察庁に送致される見込みでした。

 

そこで、逮捕から勾留請求までの時間的制約が短い場合に該当しました。

 

刑事弁護は72時間が勝負といわれますが、本件では、勝負とされる時間が48時間もありませんでした。

 

これは少年事件という特殊性にも影響があります。あくまで警察署から検察官に送検しても、最終的に少年事件は家庭裁判所全件送致主義をとっているため、検察官にも起訴するか否かの判断権があるわけではありません。

 

その日のうちに、通常、休日は検察庁は電話連絡がつかないので、担当検察官になりそうな方、緊急連絡先などを確認しておきました。

 

被疑者の初度の接見

Cさんと初度の接見を行いました。少年事件ということもあり、動機に計画性はなく衝動的なものといえ、しかも軽微な犯罪といえるのですが、少年事件は「虞犯」といって犯罪をする恐れがあれば少年の身柄を拘束できることから、来たるべき観護措置による身柄引き揚げも考慮に入れつつ、初度の接見に赴くことになりました。

 

面会では、弁護人の自己紹介、弁護士はBさんのみの味方であり、警察官や検察官とは立場が全く異なること、人権擁護説の中核をなす黙秘権の説明など基本的防御に必要な情報を提供するのみならず、証拠の収集状況、逃亡のおそれ、心理鑑定の必要性など勾留を阻止するための要件の聴き取り、心理学的な問答を終えて、勾留裁判官に面談の際に伝えるべきポイントを得て、辞去しました。

 

勾留阻止へ

ヒラソルの弁護人は事務所に戻った後、検察官宛てに勾留請求すべきではないとの意見書、勾留裁判官宛てに勾留請求を却下すべきとの意見書を提出して、それぞれ面談を希望する旨附記しました。そして、日付が変わる前に完成し、それぞれ検察庁と裁判所に提出しました。(それぞれ夜間にも提出できる窓口があります。)

 

検事との面談

翌朝、朝いちばんで弁護人選任届及び検察官との面談に向かいました。

たしかに、検察官と面談が叶うとは限りませんし、検察官の拒絶にあったり、弁護士自体がいそがしく面談に行けないということもしばしばありますので、意見書の提出のみに終わることもそれなりにあります。

しかし、今回は、弁護人選任届を検察庁に出すのが一番早いという結論となり、翌朝、弁護人選任届を出そうとしたところ、面談を申し入れて、幸運にも配点される見込みの検察官に挨拶をすることができました。

そこで、弁護人が検察官なら懸念する点を述べて、そうした点は足らないことや、さらに懸念される点があれば、父母と連絡し善処するので気軽に連絡して欲しいと申入れ、昨日の接見のうち、勾留阻止のポイントになる点などを述べて辞去しました。

検事との面談のポイントは、事実上、顔見せという面が多いです。私選弁護士が実質的に動いており、釈放しても問題がないケースが多いという検察官の経験則を働かせてもらうこともポイントです。多くは、議論をするために行くのではありません。

これらは、まず、国選弁護人には期待できない活動といえます。

 

検事の結果

残念ながら、検察官は、「勾留に代わる監護措置」の請求をすると伝えてきました。「勾留に代わる観護措置」自体、京都市など限られた地域でのみ運用されているもので、勾留延長ができず勾留期間は10日に限られることから、検察官なりのご英断であったのではなかろうかと思いました。

実情をお話しすると、「週末に逮捕されるな」という法格言があるように、週末に逮捕されると、①弁護士がいない、②取調べをする警察官も働き方改革でお休み、③検察官もお休み―ということで、④勾留担当裁判官としては、ほぼ自動的に勾留状を出してしまうことが多いのです。しかも、釈放を求める⑤準抗告の裁判、⑥保釈の裁判も「裁判官の働き方改革」の影響のため、土日には開かれなくなってきているのではないか、と指摘する論者もいます。

したがって、元来顧問弁護士や弁護士の友人がいた方が良いというのは、「週末に動いてくれる弁護士」がスポットでは見つけることは難しいということも考えられます。医師、歯科医師、経営者の方などから週末接見要請があることもありますが、面識がない方の依頼は弁護士としても受けにくいという実情はあるかもしれません。

ヒラソルでは、医師の逮捕事件なども釈放に導いた事例があります。医師の身柄の意見書を書いてもらった方にも60分で書類を書いてもらいましたが、今回も追加する書類は40分で取り付けました。

民事事件と異なり、「勾留阻止」の弁護人は時間との勝負といえるのかもしれません。(実際、勾留裁判までに間に合いましたので、効果はあったのではないかと思っています。)

勾留裁判官との面談

ヒラソルの弁護人は、担当検察官から、「勾留に代わる観護措置」を請求したとの連絡を受けて、「勾留に代わる観護措置」の場合、少年法では、勾留することができるのは「やむを得ない場合」とされています。

このため、さらに個別具体的に、やむを得ない場合に当たらないとの意見書、父母の監督を誓約する身柄引受書を取り付けて、勾留裁判官と面談を行うことにしました。

担当判事は、少年の心理学的な反省状況に関心があったため、その点は、昨日、Bさんと話をしていたので、その点をお話ししました。面談では、意見書に記載のあることの繰り返しは一切聞かれないため、重点的な主張はあらかじめ意見書に書いておく必要があります。

 

令状担当裁判官、勾留に代わる観護措置却下

夕方過ぎ、Bさんが、地検で釈放指揮がとられるとのことでした。もともとBさんの勾留場所はとても遠方の警察署だったのですが、父母が引き取りに行くのが大変だから釈放なら地検で釈放指揮をとってくれ、と意見書に記載があったため、地検で釈放指揮がとられたものと思われます。

この時点で、ヒラソルの弁護士は、次の一手として、例えば、勾留に代わる観護措置決定に対する準抗告認容事件の判例や同措置の準抗告は「申立ての趣旨」が少し特殊であるので調査をするなどを他の弁護士に依頼して入手するなど、「次の一手」に動いている中で終局となりました。

 

喉元過ぎれば熱さを忘れる

喉元過ぎれば熱さを忘れるという言葉がありますように、「勾留を阻止」すると、ころっと刑事事件のことを忘れてしまう方もいます。保釈の間にまた、犯罪をしてしまう芸能人などが典型です。

しかし、少年事件の場合、大人と比べて終局は長くなる可能性があります。

まず、検察官から家庭裁判所に対して事件が送致される。これに例外はありません。

この際、観護措置という少年鑑別所で身柄拘束する措置を家庭裁判所裁判官が取る可能性もあります。これは、心身鑑別の必要性がある場合に行ってもよく、大人の刑事事件のように証拠隠滅とか、罪証隠滅の恐れといったものよりも広く身柄拘束が認められるうえ、観護措置がとられなくても、「身柄引き揚げ」といっていつでも家裁は少年の身柄を引き揚げをすることができるのです。そのような事態は主客転倒です。

本件では、直ちに、観護措置がとられる蓋然性があるとまでは直ちにはいえないものの、審判が終了するまではそのような可能性があること、家裁調査官のインテーク(初度の感想)の取り方、心理学的なアプローチから本件問題に向かい合う必要性があるなどをアドバイスして、本件は終了となりました。

 

勾留と解雇もしやすい裁判例に注目集まる

本件は、労働法のコラムではありませんが、一般的には、逮捕・勾留されたからといって、直ちに解雇されることはないとの考え方が多数説的な見解でした。

ただし、試用期間についてはもとより異なる解釈がとられているうえ、東京地裁令和5年11月16日は、試用期間中の従業員につき、逮捕・勾留の事実を告げずに、弁護士を通じて個人的事情で欠勤すると伝え、有給休暇を消化のうえ5日半欠勤したとの事例において、会社側の普通解雇を有効としています。

この方は、その後「不起訴」になりましたが、勾留阻止ができなかったため、失職した事例といえます。

不起訴でも解雇相当という判決に驚かれる方もいるでしょう。

もちろん、「勾留阻止」は、様々な方々の協力と良心によって初めて実現可能となるもので、魔法使いのようにできるようなものではありません。

しかし、「勾留阻止」と身柄の解放に全力を尽くすということの重要性を改めてリマインドさせられる裁判例であると思い、紹介いたしました。

名古屋駅ヒラソル法律事務所では、医道審議会も踏まえた医師の刑事事件、経営者の方の刑事事件、医療従事者の方の刑事事件に力を入れています。在宅事件であったとしても、軽信しないで、まずは、弁護士にご相談ください。

勾留に代わる観護措置を取り消した準抗告審としては、福岡地裁令和元年10月9日令和元年(む)第1941号があります。近時の最高裁判例に従って、「実効的な罪証隠滅行為がなされる現実的可能性が高いか」を問い、「勾留の必要性」を否定し、原裁判に合理性を求めていることなどが注目されます。勾留の裁判も、辛島論文以降進歩が見られるところであり、「力碁」ではなく理論的に、意見書を起案する必要があるように思われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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