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暴行・傷害罪で逮捕された場合どうすべきか
暴行罪は刑法208条で、傷害罪は204条に定められています。本記事では、暴行・傷害罪についてとそれによって逮捕された場合の対処について解説します。
1 暴行・傷害について
暴行とは人の身体に対する有形力の行使を言います。殴る蹴るなどが一般的には想像されますが、判例上は髪を根元から切ること、故意に人に向かって農薬を撒く行為、自動車に向かって石を投げる行為、胸倉を掴んだ行為など、幅広く暴行の成立を認めています。物理的接触がなくても人に向けられた行為があれば成立し、投石が命中しなかった場合や幅寄せ行為にも暴行を認めた判例があるので注意が必要です。
傷害とは、人の生理機能の障害及び健康状態の不良な変更をいいます。殴る蹴るの暴行の結果相手に外傷を負わせた場合は傷害が成立します。他にもめまいを生じさせたり、無言電話でPTSDを生じさせたケースでも判例は傷害の成立を認めました。
このように暴行・傷害は一般的に想像されるような行為に限られません。自分では暴行罪とは思っていなかった行為でも暴行・傷害で逮捕されるおそれはあります。
2 暴行・傷害で逮捕されてしまうと
逮捕後は勾留も併せて最大23日もの長期にわたることもあります。その場合に逮捕者が受ける精神的負担、金銭的負担、社会的評価の失墜といった不利益は重大なものです。
3 暴行・傷害で有罪になるとどうなるのか
暴行罪の刑罰は、「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」と定められています。「拘留」とは1日以上30日未満、身柄の拘束を受ける自由刑、「科料」とは1000円以上1万円未満の財産刑です。
さらに、傷害罪の場合には刑罰は厳しくなり「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」と、非常に重たい罰則が科せられることになります。
いずれの罪でも刑務所に入る可能性があり、有罪判決が下れば、その後の人生に与える影響は重大です。
4 暴行・傷害罪で逮捕されたらまずすべきこと
ご自身又はご家族、知人の方が逮捕されてしまった場合、まずは弁護士に連絡することをおすすめします。
刑事弁護は時間との勝負です。初回接見が数時間遅れるだけで違法な取調べや不用意な供述により不利な自白調書が作られてしまう可能性があります。また、初動が早ければ弁護士が示談交渉や資料収集を速やかに行い、逮捕に続く勾留を行わないように裁判官に訴えかけることもできます。これが遅れれば避けられたはずの勾留を受け、身柄拘束期間が10日も長引くことになりかねません。
逮捕後の取り調べは外部からの連絡を断ち切った状態で行われます。事件によっては毎日何時間も取調べがされることもあり、精神的に疲弊しきって不用意な自白をしてしまうことにもなりかねません。捜査機関はプロですから、事前に弁護士から的確な助言を受けずに取り調べに臨むのはとても危険です。
また、接見禁止決定がされると家族であっても逮捕された人との面会はできず、弁護士のみが唯一の連絡手段となります。
以上の点から、逮捕後はすぐに弁護士への連絡をおすすめします。
5 依頼を受けた弁護士の活動
(1) 逮捕後の接見
依頼人の方からご相談をうけると、弁護士はまず逮捕された方への接見に参ります。刑事事件の被疑者として逮捕されると、外界と遮断された状態で捜査機関からの連日・長期間の取調べをうけることになります。身体を拘束され、日常生活と異なる空間では、拘束状態自体が不安や心細さを感じます。さらに被疑者は、密室の取調室で捜査官による取調べを受けます。外部との連絡は制限され、捜査官の発言の真偽も確かめることはできません。
そこで弁護士としてはいち早く接見を行い、弁護士は法律上の被疑者・被告人の権利を説明します。また、お話を伺ったうえで、取調べにおける諸注意を行ったり、弁護活動の方針を立てたりするなどの手助けをいたします。
(2) 早期釈放に向けた活動
逮捕・勾留後であっても準抗告という手続きにより身柄拘束が解かれる可能性があります。特に暴行罪で相手との示談が成立しているような場合には、早期釈放が期待できます。依頼を受けた弁護士は準抗告の手続のための証拠収集、検察官や被害者との交渉といった事務手続きをすぐに行い、一刻も早い釈放に向けた活動を致します。起訴後であれば、保釈に向けた活動も行います。
(3) 不起訴に向けた活動
次に弁護士は依頼人のお話をもとに証拠収集や被害者の方との示談交渉を行います。刑法犯で逮捕後に起訴、すなわち裁判がなされるケースは6割程度で残りの4割は裁判をされない不起訴となります。不起訴であれば前科はつきません。起訴不起訴の判断は有罪にできる証拠の存否や犯罪の重大性、被害者の意思を考慮してなされます。このため、起訴の前にどれだけ証拠収集をして、また、被害者と示談を成立させることが自由の身になることにつながります。
弁護士は依頼を受けた後、不起訴を目標に被害者と被害弁済等の話し合い、検察官との交渉を重ねます。
(4) 起訴後の活動
起訴されてしまった場合、できる限り執行猶予及び刑期の短縮に向けた活動をします。被害者との示談が成立していたり身元引受人がいたりする場合、執行猶予や刑期短縮の可能性は高まります。
弁護士としては被害者の方やご家族の方と粘り強く交渉し、示談成立や身元引受の約束のために尽力いたします。