刑事事件では「刑事弁護人」のはたらきが非常に重要です。
- 身柄拘束期間を短くする
- 不起訴処分を獲得して前科を避ける
- 冤罪で裁判になったときに無罪判決を獲得する
- 罪を犯している場合には執行猶予判決を獲得して刑務所行きを避ける
上記のすべてにおいて刑事弁護人による弁護活動が大きく影響します。
ただし刑事弁護人には「国選弁護人」と「私選弁護人」があり、両者にはさまざまな違いがあります。
今回は国選弁護人と私選弁護人の違いやどちらを選ぶべきか、それぞれのメリットデメリットを詳しく解説します。
このページの目次
1.国選弁護人とは
国選弁護人とは国が国費でつけてくれる刑事弁護人です。もともと公判段階で被告人の「刑事弁護人をつける権利」を実現するための制度でしたが、今は被疑者段階から国選弁護人をつけられるようになっています。
また国選弁護人をつけられる事件の種類にも制限はなく、どのような事件でも勾留されたら国選弁護人を選任できます。
2.私選弁護人とは
私選弁護人とは、被疑者や被告人が自分で依頼して選任する刑事弁護人です。勾留前の逮捕の時点でも依頼できますし、逮捕勾留されない案件でも選任可能です。
3.国選弁護人と私選弁護人の比較表
国選弁護人と私選弁護人の主な違いを表にまとめたので、まずはご覧ください。
|
国選弁護人 |
私選弁護人 |
誰が選任するか |
国 |
被疑者や被告人 |
依頼のタイミング |
勾留段階以降 |
いつでも(逮捕前でも相談可能) |
弁護士を選べるかどうか |
選べない |
選べる |
費用 |
基本的に無料(ただし負担を求められるケースもある) |
有料 |
選任の条件 |
無資力、あるいは私選弁護人を選任できない |
なし |
4.国選弁護人と私選弁護人の違い
4-1.誰が選任するか
国選弁護人を選任するのは、国です。具体的には都道府県の弁護士会で持ち回りとなっており、刑事事件に強い弁護士がつくとは限りません。普段刑事弁護を取り扱っていない弁護士が担当する可能性もあります。
私選弁護人の場合には被疑者や被告人本人が選任します。本人が身柄拘束されている場合、家族が接見を依頼して弁護士と本人が話をした上で本人が選任する流れとなります。
4-2.依頼のタイミング
国選弁護人をつけられるのは「勾留段階」以降です。逮捕後勾留までの3日間は弁護人をつけられません。また勾留に切り替わって国選弁護人を選任しても、必ずしもすぐに接見に来てくれるとは限りません。
私選弁護人の場合、逮捕直後でも依頼可能です。勾留されずに在宅捜査となった場合にも刑事弁護を依頼できますし、逮捕されずに送検された場合や自首する場合にも対応を依頼できます。
4-3.弁護士を選べるかどうか
国選弁護人の場合、国が弁護士を選ぶので被疑者や被告人が弁護人を選ぶことはできません。気に入った人や刑事弁護に強い人を選べず「気に入らないから」といって自由に解任するのも困難です。
私選弁護人の場合には刑事事件に強い弁護士や相性の良い弁護士、コミュニケーションをとりやすい弁護士などを選べます。
4-4.費用
国選弁護人の場合、国が費用を負担するので基本的に本人には費用負担が発生しません。
ただし本人に資力がある場合などには費用負担を求められる可能性もあります。
一方私選弁護人の場合、本人が弁護士と直接契約するので事務所規定の弁護士報酬が発生します。
4-5.選任の条件
国選弁護人の場合「被疑者の預貯金が50万円以下」、あるいは「私選弁護人を選任できない」という条件を満たさないと選任できません。
私選弁護人の場合にはそういった条件はないので、お金さえ用意すれば誰でも選任可能です。
5.国選弁護人のメリットとデメリット
5-1.メリット
費用がかからない
国選弁護人のメリットは、費用がかからないことです。お金がなくても依頼できるのは大きなメリットとなるでしょう。ただし以下のようにデメリットも大きいので要注意です。
5-2.デメリット
初動が遅れるリスク
国選弁護人の場合、勾留されるまで選任できません。逮捕後2~3日間は依頼できないので、その間に不利な調書を取られるなどの不利益を受けるリスクが高まります。初動が遅れるのは大きなデメリットとなるでしょう。
国選弁護人は熱心に対応してくれないケースがある
国選弁護人は報酬が低いので、弁護士によっては熱心に対応しないケースがあります。積極的に対応してくれない弁護士がついてしまうとリスクが大きくなります。
6.私選弁護人のメリットとデメリット
6-1.メリット
刑事事件に強い人、相性の良い人を選べる
私選弁護人の場合、刑事事件に強い弁護士や話しやすく相性の良い弁護士、信頼できる弁護士を選べるので安心感が高く不利益を小さくしやすいです。
逮捕直後から対応を依頼できる
私選弁護人は逮捕直後でも選任できます。すぐに接見に来てもらって必要なアドバイスを受けることにより、不利な自白をしてしまうリスクも低下します。また不起訴処分を獲得するには被害者との示談が重要ですが、逮捕直後の早期の段階で示談交渉に取りかかることにより、示談成立の可能性が高まります。刑事事件では対応できる時間が限られているため、時間を有効に使えるメリットは大きいといえます。
在宅事件でも依頼できる
国選弁護人は勾留されないと選任できないので、勾留されず在宅事件となった場合には依頼できません。しかし在宅事件でも有罪になったら前科がつくので刑事弁護活動が必要です。私選弁護人なら在宅事件でも選任可能で、検察官に不起訴の申し入れを行うなどの弁護活動を進められます。
6-2.デメリット
私選弁護人は費用がかかる
私選弁護人の大きなデメリットは費用が発生することです。事件や依頼する事務所にもよりますが、60~100万円以上かかる可能性もあります。ただ刑事事件で前科がつくと一生消えませんし、実刑判決を受けたら刑務所に行かねばなりません。被疑者被告人の人生がかかっているので、出費をしてでも有能な私選弁護人を選任するメリットが充分にあるといえます。
当事務所では痴漢や盗撮を始めとした刑事弁護に積極的に取り組んでいます。私選弁護人をお探しの方、国選弁護人からの切り替えを検討されている方はお早めにご相談下さい。