刑事事件で逮捕されたとき、当初は国選弁護人をつけても途中で私選弁護人への変更を希望される方がおられます。
今回は国選弁護人と私選弁護人の基本的な違いや変更すべきケース、変更する流れを名古屋の弁護士が解説します。
このページの目次
1.国選弁護人と私選弁護人の違い
国選弁護人とは、国が無料でつけてくれる刑事弁護人です。被疑者段階から選任できますが「逮捕当初」にはつけられません。逮捕期間が終了して「勾留」に切り替わった時点で選任できます。
また国選弁護人の場合、被疑者や被告人が気に入った弁護士を選ぶことはできません。持ち回りで担当している弁護士がつくので、どういった弁護士が選ばれるかは分かりません。刑事弁護に熱心でない弁護士や刑事弁護に慣れていない新人弁護士などがつく可能性もあります。ただし基本的に費用はかかりません。
私選弁護人は、被疑者や被告人が自分で選任する刑事弁護人です。勾留後だけではなく逮捕時からつけることができますし、刑事事件の経験豊富な弁護士を選ぶことも可能です。ただし自費で弁護士費用を負担しなければなりません。
以上が国選弁護人と私選弁護人の主な違いです。
2.国選弁護人から私選弁護人に変更すべきケース
逮捕後勾留に切り替わって国選弁護人をつけてもらっても、私選弁護人への変更が可能です。特に以下のようなケースでは、私選弁護人への変更をお勧めします。
2-1.刑事事件に詳しくない弁護士がついた
国選弁護人の場合、刑事弁護を得意とする弁護士がつくとは限りません。刑事事件を普段ほとんど取り扱っていない弁護士がつくケースもありますし、今後の対応方針などを相談したときに的を射た答えが返ってこず不安を感じるケースもあるでしょう。
このような場合には、刑事弁護に強い私選弁護人に変更した方が有利な結果を得られる可能性が高くなります。
2-2.熱心に弁護してくれない弁護士がついた
国選弁護人の報酬額は、一般の法律事務所における私選弁護の報酬基準より大幅に低くなっています。そこで弁護士の中には「国選弁護には全力を尽くすことができない」「国選弁護の場合には費用に見合った働きしかできない」と考えている方も少なくありません。
国選弁護人があまり接見に来てくれない、被害者との示談交渉も熱心に進めてくれない、不起訴に向けた対応なども進めてくれないなどの状況が発生しているなら、私選弁護人への変更をお勧めします。
2-3.コミュニケーションを取りにくい弁護士がついた
国選弁護人の場合、被疑者や被告人自身が選ぶことができないので相性の悪い方がついてしまう可能性もあります。
接見に来てもらっても話しにくくわからないことを聞けない弁護士、言っていることがわかりにくい弁護士などコミュニケーションをとりにくい弁護人がついていると、今後の弁護活動に支障が出る可能性が高まります。コミュニケーションをとりにくい国選弁護人がついたら、早期に私選弁護人の選任を検討した方が良いでしょう。
2-4.対応方針が合わない
国選弁護人は、被疑者や被告人が選任を申請すると国が自動的につけてしまうので、対応方針などを確認した上で選任することができません。接見に来てもらって事情を話したら,自分の思っている方向性や希望内容と異なる弁護方針を提示される可能性があります。
納得できないまま希望と異なる方向で弁護活動を展開されると不利益が大きくなるので、意見が異なり溝を埋められないなら早めに私選弁護人に切り替えるようお勧めします。
2-5.費用を払って自分の気に入った弁護士をつけたい
刑事事件では、いったんは国選弁護人を選任したけれども「やっぱり自分の気に入った人に思うような弁護をしてほしい」と考えるケースがあるものです。
当初はお金がないと思っていたけれど、親族などに相談してお金の算段がつく場合もあるでしょう。費用を用意してでも自分の気に入った弁護士をつけて最善を尽くしたいならば、今ついている国選弁護人を解任して刑事事件に強い別の私選弁護人に変更するのがベターです。
2-6.弁護人を変えてより有利な結果を獲得したい
刑事事件で有罪判決を受けたら一生消えない前科がついてしまいます。執行猶予がつかなければ刑務所に行かねばなりません。そのような不利益な結果をどうしても避けたい、最善を尽くしたい方は、後悔のないように自分で私選弁護人を選んだ方が「納得できる結果」を獲得しやすくなります。
3.国選弁護人から私選弁護人に変更する際の注意点
国選弁護人から私選弁護人に変更すると、弁護士費用が発生します。最低でも30万円、ケースによっては80万、100万といった費用がかかる可能性もあるので、出費については理解しておく必要があります。ただし分割払いができる事務所も多いので、依頼時に相談してみましょう。
また私選弁護人を選任するときには、刑事弁護に積極的に取り組んでいて相性が良く信頼できると感じられる人を選びましょう。それがもっとも良い結果を獲得できて後悔しないためのポイントです。
4.国選弁護人から私選弁護人に変更する流れ
国選弁護人から私選弁護人に変更するときには、以下のような流れで進めましょう。
4-1.依頼したい弁護士に相談する
まずは刑事弁護を依頼したい弁護士に相談をします。被疑者・被告人が勾留されているときには家族に相談に行ってもらい、一度留置場や接見に来てもらって話をしましょう。
4-2.私選弁護を依頼する
相談・接見した弁護士を気に入って依頼したい場合には、依頼の申出をします。弁護士が了承したら「弁護人選任届」を作成します。
4-3.私選弁護人が弁護人選任届を提出する
弁護士が検察官や裁判所に弁護人選任届を提出したら、正式に私選弁護人が選任されます。私選弁護人が決まったら国選弁護人は自動的に解任されるので、切り替えが完了します。別途国選弁護人の解任手続きをする必要はありません。
当事務所では、痴漢など犯罪を始めとして刑事弁護活動に熱心に取り組んでいます。名古屋で私選弁護人をお探しの方がおられましたら、是非ご相談下さい。