事件別-痴漢

痴漢とは?痴漢で逮捕されてしまった場合の対処法

痴漢事件はだれにでも起こり得るものです。いつもの通勤電車を利用してバスや電車の中で、又は降りた瞬間に腕をとられ、痴漢を訴えてくる被害者は少なくありません。身分や社会的地位に関係なく、痴漢事件は日常生活の中で突然降りかかってきます。だからこそ、痴漢という犯罪と痴漢として逮捕されてしまった場合の対処法は知っておくべきと言えるでしょう。本記事では、痴漢はどのような犯罪になるのか、痴漢したとして逮捕されてしまった場合どのように対処すべきかを解説します。

 

第1 痴漢とは

(1) 痴漢といえば、電車やエレベーターといった空間で身体に触る行為が想像されます。このような痴漢行為は実務上、各地方自治体の迷惑防止条例違反に該当することが多いです。例えば愛知県の迷惑防止条例では以下のように定められています。

愛知県迷惑行為防止条例第二条の二

何人も、公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

一  人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という。)の上から触れること。

条例の罪だからと言って軽いわけでは無く、刑罰は「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」です(15条1項)。懲役とは、刑務所内で労役に服する刑罰です。

 

(2) さらに、衣服の内部から直接身体を触るなど性的自由の侵害の程度が強い場合、より重罪である強制わいせつ罪(刑法176条)が適用されるおそれがあります。この場合の刑罰は罰金では済まず、「6月以上10年以下の懲役」です。

 

第2 痴漢で逮捕されてしまった場合の対処法

ご自身やご家族が痴漢で逮捕されてしまったという方は、まずは弁護士にご連絡することをおすすめします。痴漢事件(冤罪でもそうでなくても)を少しでも納得のいく結果で終わらせるにはできるだけ早く弁護士に連絡をすることが重要です。

痴漢で逮捕された場合、他の犯罪でもそうですが、身柄拘束中に取調べが行われます。ここで不用意な自白をしてしまえば、その後の弁護活動が大きく不利になってしまいます。そこで、できる限り取調べの前に弁護士と接見をし、弁護活動に向けた作戦を立てるべきといえます。初回の接見が数時間遅れるだけで違法な取調べや不用意な供述により不利な自白調書が作られてしまう可能性もあるのです。取り調べは外部からの連絡を断ち切った状態で行われます。なかなか自白をしない場合には連日何時間も取調べがされることもありますので、精神的に疲弊しきって不用意な自白をしてしまうことにもなりかねません。捜査機関はプロですから、事前に弁護士から的確な助言を受けずに取調べに臨むのはとても危険です。

以上の点から、痴漢により逮捕された場合、まずは弁護士に相談するのがベストな対処法と言えるでしょう。なお、ご自身が逮捕された後でも、警察に弁護士を呼ぶように要求することができます。

 

第3 罪を認めればすぐに出てこれるのか

痴漢により迷惑行為防止条例によって逮捕され、初犯の場合、懲役刑ではなく罰金刑で済むことがほとんどです。そしてこの場合、罪を認めれば略式起訴と呼ばれる簡易な裁判手続きが行われ、早ければ当日にも出てくることができます。

罰金の額は数十万円になります。もっとも、罰金とはいえ前科はついてしまいます。

前科のデメリットとしては一部の業種(警備、国家公務員)に就くことができなくなること、海外旅行の際にビザの申請が必要になることがあります。このような前科は5年すれば消滅してしまい法的効力を失います。そのため、5年程度ならなんでもないという方には、すぐに罪を認めて釈放されることを選ぶ方もいるかもしれません。

 

第4 依頼を受けた弁護士の活動

(1) 逮捕後の接見

逮捕者のご家族の方から相談をうけると、弁護士はまず逮捕された方への接見に参ります。刑事事件の被疑者として逮捕されると、外界と遮断された状態で捜査機関からの連日・長期間の取調べをうけることになります。日常生活と異なる空間では、拘束状態自体が不安や心細さを感じさせます。接見禁止命令が出された場合は、家族との面会もできなくなります。外部との連絡は制限され、捜査官の発言の真偽も確かめることはできません。

そこで弁護士としてはいち早く接見を行い、弁護士は法律上の被疑者・被告人の権利を説明します。また、お話を伺ったうえで、取調べにおける諸注意を行ったり、今後の弁護活動の方針を立てたりするなどのお手伝いをいたします。

 

 (2) 早期釈放に向けた活動

逮捕・勾留後であっても準抗告という手続きにより身柄拘束が解かれる可能性があります。依頼を受けた弁護士は準抗告の手続のための証拠収集、検察官や被害者との交渉といった事務手続きをすぐに行い、一刻も早い釈放に向けた活動を致します。起訴後であれば、保釈に向けた活動も行います。

 

 (3) 不起訴に向けた活動

逮捕後に必ず裁判がされるわけではなく、逮捕されたとしても起訴されるとはかぎりません。特に初犯で前科もなければ不起訴になる可能性は十分にあります。起訴不起訴の判断は有罪にできる証拠の存否や犯罪の重大性、被害者の意思を考慮してなされます。このため、起訴の前にどれだけ証拠収集をするかが重要です。弁護士は依頼を受けた後証拠収集に努め、検察官との交渉を重ねます。

 

(4) 起訴後の活動

起訴されてしまった場合、できる限り執行猶予及び刑期の短縮に向けた活動をします。被害者との示談が成立していたり身元引受人がいたりする場合、執行猶予や刑期短縮の可能性は高まります。

 

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