刑事事件で逮捕されたり処罰を受けたりした事実は、誰にも知られたくないものです。事件が解決した後も「誰かに知られるのではないか?」と心配になる方もいるでしょう。
弁護士には守秘義務があり、民事裁判や刑事裁判でも証言拒否権が認められているので、弁護士に相談したことや刑事弁護を依頼したことによって事件の内容を第三者に知られる心配は不要です。
今回は弁護士に刑事弁護活動を依頼したときに相談の秘密が守られる理由について、解説します。
このページの目次
1.弁護士の守秘義務とは
刑事弁護を依頼すると、弁護士にはさまざまな事情を打ち明けることになります。中には極めてプライベートな情報もありますし個人情報も知られます。また自分の犯した犯罪行為や処分決定内容、場合によっては刑罰を受けた事実も知られるので、重要な秘密を共有することになります。
弁護士が秘密を守ってくれないと、安心して刑事弁護を依頼できません。
そこで弁護士には「守秘義務」が課されています。守秘義務とは相談者や依頼者の秘密を守らねばならない義務です。
具体的には弁護士法職務基本規定の23条において「弁護士は、正当の理由なく、依頼者について職務上知りえた秘密を他に漏らし、又は利用してはならない」と定められています。
守秘義務は弁護士業務を行うときのもっとも基本的な義務の1つなので、通常の弁護士は絶対に守秘義務を守ります。家族や友人、他の弁護士にも話すことはありません。
刑事弁護を依頼するとき、弁護士が守秘義務違反をして秘密を周囲に漏えいする心配は不要です。
2.守秘義務に違反したらどうなるか
もしも弁護士が守秘義務に違反して秘密を家族や友人その他の第三者に漏えいしたら、その弁護士はどうなるのでしょうか?
2-1.弁護士会により懲戒処分を受ける
すべての弁護士は都道府県の「弁護士会」に加入しており、弁護士に非行があった場合には加入している弁護士会が会員である弁護士に対し「懲戒処分」を行うルールになっています。
守秘義務違反は弁護士の基本的な業務遂行における義務に反する行為で、非常に重大な非行といえます。
よって守秘義務を守らずに依頼者の秘密を漏えいした場合、その弁護士は弁護士会から懲戒される可能性が高くなります。秘密を漏えいされた依頼者の側から懲戒処分を申し立てることも可能です。
懲戒処分の決定内容にはいくつかの種類がありますが、一定期間の業務停止や弁護士会からの退会命令、弁護士名簿からの除名処分などによって弁護士業務を続けられなくなるケースも少なくありません。
2-2.秘密漏示罪になる
弁護士による守秘義務違反は、刑法上の犯罪にもなります。刑法134条の「秘密漏示罪」では「医師や薬剤師、弁護士などの一定の職業についているものやついていたものが業務上知り得たことについて秘密を漏らした場合、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金刑に処する」と規定されています。
弁護士が依頼者の秘密を漏えいすると、弁護士本人が逮捕されたり刑事事件として立件されて処罰されたりする可能性があるのです。弁護士を辞めても免責されません。
弁護士にとって守秘義務を守ることは自分の身を守ることにも直結します。
依頼者の秘密を漏えいすると業務を続けられなくなったり刑事事件になったりするリスクが発生するので、弁護士が守秘義務違反をして依頼者の秘密を漏らす可能性はまずありません。
3.弁護士と通報義務
通常の公務員には「通報義務」があります。通報義務とは職務遂行上において犯罪行為を知ったときには警察などの捜査機関に通報しなければならない義務です。
では弁護士にも通報義務があるのでしょうか?
もしあれば、弁護士に刑事弁護を依頼するとその刑事事件の内容を警察に知られてしまうので、安心して依頼できなくなってしまうでしょう。
こちらについても心配は不要です。先ほど説明したように弁護士には「守秘義務」が課されるので、それと矛盾する「通報義務」は課されないのです。
そもそも刑事弁護人の仕事は、捜査機関側と対峙して被疑者や被告人の利益を守ることです。刑事弁護人が依頼者から知り得た情報を捜査機関に漏らすようでは刑事弁護などできません。また誰も弁護士を信頼して刑事弁護を依頼しなくなるでしょう。
刑事弁護人に通報義務が課されることはないので、逮捕前の自首の相談なども安心して行いましょう。
4.弁護士の証言拒絶権とは
民事裁判や刑事裁判の「証人」として召喚された場合、証人は「証言義務」を課されます。虚偽を述べると「偽証罪」が成立して処罰される可能性もあります。
では弁護士が民事裁判や刑事裁判で証人として呼ばれて過去に取り扱った事件について質問された場合、弁護士は証言を拒絶できずに依頼者に関する事項を裁判の場で話さないといけないのでしょうか?
弁護士には民事裁判でも刑事裁判でも「証言拒否権」が認められています(民事訴訟法197条1項2号、刑事訴訟法149条)。
どちらにも「弁護士や過去に弁護士をしていたものが職務上知り得た事実について証言を求められた場合、証言を拒絶できる」と規定されています。
刑事弁護を担当した弁護士が将来何らかの裁判の証人として証言を求められたとしても、事件の内容を裁判で話される心配はありません。
5.弁護士に相談しても秘密は守られます
以上のように、弁護士には守秘義務があり証言拒否権も認められるので、依頼者が弁護士に話した内容を第三者や捜査機関に知られる心配はありません。
まだ世間に明るみになっていない犯罪行為を弁護士に相談しても、捜査機関へ通報されたり第三者へ漏らされたりすることはありません。また逮捕された事実や刑罰を受けた事実を世間に知られる心配も不要です。弁護活動を進める上で弁護士に打ち明けた事件と関連するプライベートな事実なども守秘義務の対象です。
当事務所でも依頼者の秘密保持や情報管理については極めて慎重に行っております。犯罪行為を誰にも知られていないけれど自首をした方が良いか迷っている方、刑事弁護を依頼したいけれどもしっかり秘密を守ってもらいたい方も安心してご相談下さい。