事件別―公務執行妨害

公務執行妨害で逮捕された場合の対処法

第1 どのような場合に公務執行妨害罪が成立するか

公務執行妨害罪は、職務執行中の公務員に対して「暴行又は脅迫」を加えた場合に成立する犯罪です(刑法95条1項)。

公務員とは、警察官や消防士のみならず、役所の職員や議員、教員なども含まれます。

「暴行」とは、職務質問中に警察官を押し倒して逃げるといった公務員に対する直接的な暴力行為ではもちろん、パトカーに石を投げるなどの行為でも成立する可能性があります。また、職務質問中のパトカーを蹴る、警察官の誘導灯を壊すなど公務員を直接攻撃しない行為も含まれます。「脅迫」とは、公務員に対する害悪の告知であり、役所の職員に対して「殺してやる」などと脅す行為が典型です。

単に職務質問中に逃げ出すだけでは暴行も脅迫もないので公務執行妨害は成立しません。

 

第2 公務執行妨害で有罪になるとどうなるか、量刑はどの程度か

公務執行妨害の刑罰は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金です。罰金の場合は多くの場合30万円から50万円程度になります。実刑判決が下されても執行猶予付きの判決が多いです。

 

第3 公務執行妨害で逮捕されてしまった場合の対処法

ご家族が公務執行妨害の罪を疑われて逮捕されてしまったという方は、まずは弁護士にご連絡することをおすすめします。

刑事弁護は時間との勝負です。初回接見が数時間遅れるだけで違法な取調べや不用意な供述により不利な自白調書が作られてしまう可能性があります。また、初動が早ければ弁護士が示談交渉や資料収集を速やかに行い、逮捕に続く勾留を行わないように裁判官に訴えかけることもできます。これが遅れれば避けられたはずの勾留を受け、身柄拘束期間が10日も長引くことになりかねません。

逮捕後の取り調べは外部からの連絡を断ち切った状態で行われます。事件によっては毎日何時間も取調べがされることもあり、精神的に疲弊しきって不用意な自白をしてしまうことにもなりかねません。捜査機関はプロですから、事前に弁護士から的確な助言を受けずに取り調べに臨むのはとても危険です。

また、接見禁止決定がされると家族であっても逮捕された人との面会はできず、弁護士のみが唯一の連絡手段となります。

以上の点から、逮捕後はすぐに弁護士への連絡をおすすめします。

 

第4 依頼を受けた弁護士の活動

(1) 逮捕後の接見

依頼人の方からご相談をうけると、弁護士はまず逮捕された方への接見に参ります。刑事事件の被疑者として逮捕されると、外界と遮断された状態で捜査機関からの連日・長期間の取調べをうけることになります。身体を拘束され、日常生活と異なる空間では、拘束状態自体が不安や心細さを感じます。さらに被疑者は、密室の取調室で捜査官による取調べを受けます。外部との連絡は制限され、捜査官の発言の真偽も確かめることはできません。

そこで弁護士としてはいち早く接見を行い、弁護士は法律上の被疑者・被告人の権利を説明します。また、お話を伺ったうえで、取調べにおける諸注意を行ったり、弁護活動の方針を立てたりするなどの手助けをいたします。

 

 (2) 早期釈放に向けた活動

逮捕・勾留後であっても準抗告という手続きにより身柄拘束が解かれる可能性があります。依頼を受けた弁護士は準抗告の手続のための証拠収集、検察官や被害者との交渉といった事務手続きをすぐに行い、一刻も早い釈放に向けた活動を致します。起訴後であれば、保釈に向けた活動も行います。

 

 (3) 不起訴に向けた活動

逮捕後に必ず裁判がされるわけではなく、公務執行妨害で逮捕されたとしても起訴されるとはかぎりません。特に初犯で前科もなければ不起訴になる可能性は十分にあります。起訴不起訴の判断は有罪にできる証拠の存否や犯罪の重大性、被害者の意思を考慮してなされます。このため、起訴の前にどれだけ証拠収集をするかが重要です。弁護士は依頼を受けた後証拠収集に努め、検察官との交渉を重ねます。

 

(4) 起訴後の活動

起訴されてしまった場合、できる限り執行猶予及び刑期の短縮に向けた活動をします。被害者との示談が成立していたり身元引受人がいたりする場合、執行猶予や刑期短縮の可能性は高まります。

 

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