事件別―脅迫・名誉棄損

脅迫・名誉棄損で逮捕された場合どうなるのか

1 名誉棄損・脅迫とは

名誉棄損は、不特定又は多数人に対して、人の社会的評価を低下させる事実を適示する行為をいいます。社会的評価を低下させる事実とは、社会的能力や学問的能力、身分、性格、身体的・精神的特徴など社会生活で評価の対象となる事実を広く含みます。すでに一般に知られている事実、虚偽の事実も含まれます。死者の名誉棄損については虚偽の事実の適示をしなければ名誉棄損になりません(刑法230条2項)。最近はSNSで容易に情報を発信できるようなった反面、考えなしに人の社会的事実を低下させる事実を公開してしまい、名誉棄損してしまうことがあるので注意が必要です。

脅迫とは、生命・身体・自由・名誉又は財産に対する害悪の告知を言います。害悪は被害者本人か親族に関するものに限られるので、恋人を殺すと脅しても脅迫罪にはなりません。不正行為の通報のように行為自体が適法でも、「上司に通報する」とか「告訴する」などと告知した場合も、相手を畏怖させるのが目的なら脅迫罪が成立し得るため注意が必要です。

 

2 名誉棄損・脅迫で有罪になるとどうなるのか

名誉棄損罪の刑罰は、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。もっとも、初犯であればよほど悪質であったり被害者の被害が大きくない限りは罰金で済むと考えます。また、懲役刑であっても1年程度が相場です。

脅迫の刑罰は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」とされています。脅迫についても初犯であれば罰金で済むことが多いです。

 

3 逮捕されたらまずすべきこと

ご自身又はご家族、知人の方が逮捕されてしまった場合、まずは弁護士にご連絡することをおすすめします。

刑事弁護は時間との勝負です。初回接見が数時間遅れるだけで違法な取調べや不用意な供述により不利な自白調書が作られてしまう可能性があります。また、初動が早ければ弁護士が示談交渉や資料収集を速やかに行い、逮捕に続く勾留を行わないように裁判官に訴えかけることもできます。これが遅れれば避けられたはずの勾留を受け、身柄拘束期間が10日も長引くことになりかねません。

逮捕後の取り調べは外部からの連絡を断ち切った状態で行われます。事件によっては毎日何時間も取調べがされることもあり、精神的に疲弊しきって不用意な自白をしてしまうことにもなりかねません。捜査機関はプロですから、事前に弁護士から的確な助言を受けずに取り調べに臨むのはとても危険です。

また、接見禁止決定がされると家族であっても逮捕された人との面会はできず、弁護士のみが唯一の連絡手段となります。

以上の点から、逮捕後はすぐに弁護士への連絡をおすすめします。

 

4 依頼を受けた弁護士の活動

(1) 逮捕後の接見

依頼人の方からご相談をうけると、弁護士はまず逮捕された方への接見に参ります。刑事事件の被疑者として逮捕されると、外界と遮断された状態で捜査機関からの連日・長期間の取調べをうけることになります。身体を拘束され、日常生活と異なる空間では、拘束状態自体が不安や心細さを感じます。さらに被疑者は、密室の取調室で捜査官による取調べを受けます。外部との連絡は制限され、捜査官の発言の真偽も確かめることはできません。

そこで弁護士としてはいち早く接見を行い、弁護士は法律上の被疑者・被告人の権利を説明します。また、お話を伺ったうえで、取調べにおける諸注意を行ったり、弁護活動の方針を立てたりするなどの手助けをいたします。

 

 (2) 早期釈放に向けた活動

逮捕・勾留後であっても準抗告という手続きにより身柄拘束が解かれる可能性があります。特に名誉棄損や脅迫で相手との示談が成立しているような場合や被害届を取り下げられたような場合には、早期釈放が期待できます。依頼を受けた弁護士は準抗告の手続のための証拠収集、検察官や被害者との交渉といった事務手続きをすぐに行い、一刻も早い釈放に向けた活動を致します。起訴後であれば、保釈に向けた活動も行います。

 

 (3) 不起訴に向けた活動

次に弁護士は依頼人のお話をもとに証拠収集や被害者の方との示談交渉を行います。刑法犯で逮捕後に起訴、すなわち裁判がなされるケースは6割程度で残りの4割は裁判をされない不起訴となります。不起訴であれば前科はつきません。起訴不起訴の判断は有罪にできる証拠の存否や犯罪の重大性、被害者の意思を考慮してなされます。このため、起訴の前にどれだけ証拠収集をして、また、被害者と示談を成立させることが自由の身になることにつながります。

弁護士は依頼を受けた後、不起訴を目標に被害者と被害弁済等の話し合い、検察官との交渉を重ねます。

 

(4) 起訴後の活動

起訴されてしまった場合、できる限り執行猶予及び刑期の短縮に向けた活動をします。被害者との示談が成立していたり身元引受人がいたりする場合、執行猶予や刑期短縮の可能性は高まります。

弁護士としては被害者の方やご家族の方と粘り強く交渉し、示談成立や身元引受の約束のために尽力いたします。

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